春の雨が止む気配もなく降り続いていた。この曰、乗鞍高原へ、そろそろ見頃の水芭蕉を撮りに行くことにしていた。 びっしょりと濡れるであろう撮影を思うとちょっと気が重かった。「でも、行かなきゃな」と車に機材を積み込みアクセルを踏んだ。「雨の曰は、面白い写真が撮れるんだから、喜んで出かけなくっちゃ」と普段、写真教室でみんなに話しているのはこの自分自身だ。 標高1500m、雨に霞む乗鞍高原・一の瀬園地に人影はなかった。いつもどおりに水芭蕉の咲く水辺に歩いて行った。「あれ・・・」状況が見えてくるまでに少し時間が必要だった。 降り続いた雨水が窪みに溜まってプールのようになり、顔を出していた花たちが水没していたのだ。水の中を覗き込むと、白いきれいな水芭蕉の花たちが水中花となっている。その株の真上の水面に、雨雫が丸い波紋を次々と広げていた。撮影することを忘れ、しばらくは眼前の光景に見とれていた。水際から3mほどに咲く一株の水芭蕉をフレーミングし、広がる雨の輪のリズムに合わせてシャッターを切った。 それにし...